超音波風向風速計の原理

空気中の音速cは次式で表されます。
c=√(kRT/M) [m/s] … ①

k=1.403:空気の比熱比
M=0.028966kg/mol:空気の分子量
R=8.3144598J/Kmol:気体定数


超音波の伝搬時間は次式で表されます。

t=L/(c±v) [s] … ②

L:伝搬距離
c:音速
v:伝搬方向の風速

反射を利用して計測する場合には、
伝搬距離は L/sinθ となり、
風速の影響は v・sinθ となるため
伝搬時間は次式で表されます。

t=(L/sinθ)/(c±v・sinθ) … ③

L:伝搬距離
c:音速
v:L方向の風速
θ:反射角

往路と復路の伝搬時間 t1,t2 を計測すると、

t1=(L/sinθ)/(c+v・sinθ) … ④
t2=(L/sinθ)/(c-v・sinθ)

風速と音速について解くと、

v=(L/2sin²θ)(1/t1-1/t2) … ⑤
c=(L/2sinθ)(1/t1+1/t2)

風速は音速に依存しないで計測できますし、
音速は風速に依存しないで計測できます。



実際にはt1やt2を計測するのは簡単ではありません。
筐体を伝搬する音や、目的外の反射波が重なるという
問題もありますが、最も大きな問題は超音波振動子が
入力した信号に比例してそのまま振動するのではなく
入力した信号に刺激され固有振動数で勝手に振動する
事にあります。

一方、伝搬時間の差の計測は比較的容易です。
波形の何処で測っても時間差は同じなので測り易い。
小型化によって、送信器と受信器の距離を十分に確保
できない場合には、気温と伝搬時間の差(t2-t1)を
測って音速と風速を計算する方が現実的です。

v=(t2-t1)c²/(2L) … ⑥

ちなみに温度計測誤差±10℃は風速換算で±0.1m/s程度なので実用上は問題になりません。

超音波風向風速計の構造


風の通路上に超音波の送受信器があると流れを乱して
正確な計測ができません。そこで、図の様に配置する
事で流れを乱さないようにします。

反射の回数によって伝搬時間は長くなりますが、
風速を求める式は反射の回数や間隔Dに関わらず
式⑤がそのまま利用できます。

反射1回だと指向性の中心から外れる事による減衰が
大きくなるという欠点がありますが、伝搬距離が短い
という利点が勝っています。



送受信機を正三角形に配置する事で、少ない送受信機の数で
風ベクトル(2次元)の計測ができます。
Va,Vb,Vcの任意の2つからVx,Vyの計算が出来ますが、
次式で3通りの計算の平均値が求められます。

Vx=(2Va-Vb-Vc)/3 … ⑦
Vy=(Vb-Vc)√3/3

伝搬時間の差を検出すれば良いとは言っても、風速が速くて
超音波の周期を超える時間差があると、時間差を周期分だけ
誤認する恐れがあります。

しかし、正三角形に配置した場合は各速度ベクトルの総和が
0になる事で正しく計測できた事の確認ができます。

Va+Vb+Vc=0 … ⑧

多数決を利用する事で誤認の訂正も可能ですが、
風速20m/s以内で誤認する恐れはありません。

超音波振動子の固定方法

3DプリンターでABSホルダーを製作して
Oリングとスポンジで超音波振動子を固定し、
塩ビ筐体とホルダーはアセトンで溶着しました。


超音波風向風速計のシステム概要

気温と超音波伝搬時間の3方向の往復差を15秒毎に250回計測して平均値を
インターネットを経由してサーバーにアップロードします。
1分間の風向風速の平均及び10分間の最大風向風速をサーバー側で計算します。
計測結果は専用ウェブサイトから数値、グラフ、音声で情報提供します。
複数の風向風速計を配置する事を想定して利用者が情報を選択できる機能を設けます。

インターネットへの接続はWiFi経由、WiFi接続可能な場所まではWiSun経由で接続します。
電波法を遵守し周波数割当に従った無線利用を行います。

気象業務法第6条第2項のただし書、気象業務法施行規則第1条の4の範囲で運用します。
パラグライダーの離発着場として整備した特殊な環境にのみ利用できるものであり、
防災等に利用する事はできません。

超音波風向風速計の信号処理

超音波の伝搬は空間だけではなく筐体を通るものもあります。
さらに空間伝搬するものでも反射回数の異なるものもあります。
これらから所望の位置の波形のずれを検出する必要があります。

これにはそれぞれの信号に時間の差がある事を利用する事で
容易に分離する事ができます。

【超音波送信回路】
Arduinoから超音波振動子にコンデンサを
通して40kHz10Vppの矩形波を加えます。

【超音波受信回路】
アナログマルチプレクサで超音波振動子を
選択して出力を平衡計装アンプで増幅し、
コンパレータで矩形波に変換してArduinoの
割込入力に加えます。
Arduinoに入力する矩形波の立ち上がりが
遅いと時間精度に影響するので、750V/µsと
特別にスルーレートの速いチップを使います。
これにより無調整が可能になります。

【温度計測回路】
温度センサーIC(MCP9700等)をArduinoに接続するだけです。

超音波風向風速計の制御基板

発注していた基板が出来上がりました。
7/13発注して7/16日発送され7/22に到着。
注文は5枚でしたが届いたのは12枚。
インボイスに数量訂正がありました。
品代$4.90+書留航空便$8.04=$12.94
日本メーカーなら品代だけで1万円以上、
中国恐るべしです。
実は、超音波振動子やマイコンも中国から
購入しています。
無線機も中国製の方が1桁安いのですが、
技適認証が無いので個人で認証を受けると
10セットは作らないと元が取れません。

5枚の価格で12枚届いたのは喜ぶべきですが
1枚に4種類1セットの基板を2セット配置して
切り分けて使う様に設計したので、全部で
24セットになります。でも使うのはせいぜい
数セットです。

通常は緑色で発注していますが、今回は趣味の
製品なので黄色にしてみました。しかし実物を
見ると、昔のベークライトを思わせるレトロで
チープな色でした。少しがっかり。
黒い印刷が際立つので、字を太く大きくすれば
かわいく仕上がったかも知れません。残念!

当初 7~12Vを電源とする予定でしたが、
基板完成後 5Vを電源とする事に変更したので
ジャンパ線で対応する事にしました。残念!

超音波風向風速計のシステム構成

① 計測WiFiモジュール
・風向風速計測回路18mA
・WiFiモジュール(ESP-WROOM-02)62mA(検討中)
・ソーラーパワーモジュール 5V×80mA=400mW

② 計測WiSunモジュール
・風向風速計測回路18mA
・WiSunモジュール(IM-920)2mA
・ソーラーパワーモジュール 5V×20mA=100mW

③ WiSun中継モジュール
・WiSunモジュール(IM-920)20mA
・ソーラーパワーモジュール 5V×20mA=100mW

④ WiSunWiFiモジュール
・WiFiモジュール(ESP-WROOM-02)62mA(検討中)
・WiSunモジュール(IM-920)18mA
・ソーラーパワーモジュール 5V×80mA=400mW



計測データはWiFi-APを通してサーバーに
アップロードします。
WiFi-APまでの距離に応じて次の3通りの
構成ができます。
① ⇒ WiFi-AP
② ⇒ ④ ⇒ WiFi-AP
② ⇒ ③ ⇒ ④ ⇒ WiFi-AP
中継モジュールの数に制限はありません。

超音波風向風速計のデータ通信

Love1② ⇒ Shop④ OK
Love3② ⇒ Shop④ 未
Sky3② ⇒ Dome④ OK
Sky1② ⇒ Sky2③ ⇒ Dome④ 未

ソーラーパワーモジュールの仕様

無日照稼働時間を2週間(336h)とすればリチウムイオンバッテリーは
②③ 100mW×336h/3.7V/0.9= 10090mAh

有効日照時間を3h/day、4日で満充電とすればソーラーパネルは
②③ 10090mAh×3.7V/3h/day/4day=3111mW

注:WiFi接続する①④には外部から電力供給を行うのが基本です。

モバイルバッテリー

バッテリーはコスパの高い20000mAhのPowerAddを余裕を持って使用します。
内部には18650(2500mAh)バッテリー×8本と充電回路と放電回路と保護回路が
含まれているにも関わらず、18650バッテリー単体より安い。

モバイルバッテリーは本来スマホ充電用なので無停電電源として利用するには
・充電しながら放電できるようにする。
・オートパワーオフ機能を止める。
という改造が必要になります。

バッテリー保護回路と5Vへの昇圧回路を設けて内部の18650バッテリーから
直接放電するように改造すれば良い。

実力試験結果:②④の場合 374.5h

ソーラーパネル

ソーラーパネルはSi単結晶10WでUSB出力を備えたポータブルタイプを使用します。
パネル自体は樹脂でラミネートされていますがコネクタは防水されていないので
コネクタを差し込んだ状態で樹脂でモールドします。

ソーラーパネルの角度

緯度および月平均日照時間から求める事のできる
ソーラーパネルの最適傾斜角は埼玉県秩父地方で
33.6°とされています。
最適傾斜角で設置した場合、発電量は夏に減少し
冬に増加する傾向があり、最低は9月になります。
傾斜がやや緩いですが、雪が滑り落ちやすいパネル
構造及び表面にする事で、積雪の影響は最小限に
抑えられると思われます。
なお、充電可能な最低照度をできるだけ下げる為、
ソーラーパネルは動作電圧の高い物が望ましい。

超音波風向風速計の主なパーツリスト(②④構成)

No名称規格単価[円]数量
M1塩ビ掃除口757482
M2塩ビキャップ753283
M3塩ビ継手75×402281
M4塩ビパイプVU405741
M5振動子ホルダ3Dプリント-3
M6OリングΦ12.3×2.4423
M7ウレタンスポンジt1×8×50353
M小計3513

No名称規格単価[円]数量
E1超音波振動子40kHz防水トランシーバ1523
E2温度センサMCP 9700E401
E3ArduinoNano互換器3961
E4IC74HC4052301
E5ICLT11674001
E6ICLT18133871
E7IC3.3V 150mA402
E8コンデンサ10µF304
E9コンデンサ1µF201
E10コンデンサ0.1µF156
E11抵抗100Ω11
E12抵抗1kΩ13
E13抵抗10kΩ18
E14抵抗18kΩ11
E15ピンヘッダー129p
E16ピンソケット318p
E17スイッチ32
E18プリント基板14361/12
E小計2241

No名称規格単価[円]数量
R1WiFiモジュールWROOM-024001
R2WiSunモジュールIM-92037002
R小計7800

No名称規格単価[円]数量
P1ソーラーパネルSi単結晶 10W USB出力17941
P2プレート A5052250×140×t37601
P3取付金具 A5052(118+74)×100×t36801
P4連結部材3Dプリント1
P4防水箱大1081
P4防水箱小1081/2
P5サドルバンド樹脂製1184
P6バッテリーPowerAdd 20000mAh19991
P7バッテリー保護回路18650521
P8DC-DCコンバータ3.7->5V2A93%541
P小計5973
この他、接着剤、ビニル線、半田、ボルトナット等の消耗品が必要です。